母と私のコンチェルト5:記憶の架け橋

ここまでわりと良い面、母の調子の良い部分ばかり書いてきたけれど、今回はちょっと深刻になりつつある記憶の話。
先日この街での主治医を決めて今一度認知症の度合いの口頭での検査を行ったところ、今日の日付、さっき示された言葉など直近の事が思い出せない。昔の仕事の事や家族の想い出、前から知っている事柄などは語れても、今さっきの出来事を忘れてしまうのである。
日常生活でも、あれ?なんだっけ?が多くなっているがその殆どはついさっきの出来事だったり、昨日の事だったりする。
あれ?さっき鍵開けてどこに置いたっけ?
あれ?薬飲んだっけ?
あれ?昨日バスに乗ってどこ行ったんだっけ?
手帳に予定を書くことにしたのだけれど、元々手帳でスケジュール管理する習慣がなかったので手帳の存在そのものを忘れてしまい、
あれ?あそこへ行くのは明日だっけ?いつだっけ?
出掛ける間際に保険証や鍵など大事なものが無くなった時などイライラしてしまうことも多々あるが、私自身も時々やらかしているので苦笑してしまう。
そして母はその忘れっぷりに自分でウケて笑い飛ばしているので、とりあえず深刻になり悩まれるよりは良いかなとは思っているのだが…

テレビドラマなども最近のものを連続して観るのが嫌になっている。内容が面白くないというのもあるのだろうけど、登場人物や前回のストーリーなど忘れてしまう事が多いため楽しめないようだ。
そんな中、今二人でハマって観ているのがこの「男はつらいよ」と再放送中の朝ドラ「おしん」だ。
亡くなった父はちょっと渥美清さんに似ていたこともあり、父と母はこの寅さんシリーズが大好きだった。東京へ引っ越してきたばかりの頃、早々に葛飾柴又、帝釈天へ二人して行ったそうだ。
ありがたいことにNetflixで1話から全部観られるので若い寅さんに再会しながら、大爆笑している。
おしん放送当時は働いていたため、飛び飛びにしか観れなかったそうで、やっと話が繋がったそうだ。

寅さんもおしんも昭和の日本が描かれているので、そこから母の若かりし頃に想いを馳せ、懐かしい話を語ってくれる。去年母の想い出を辿る旅をした時も、当時の話が鮮明に蘇ったようでとても嬉しそうだった。
母たちは激動の時代を生き抜いてきた。
自分が歩んできた道のり、人生を振り返ること、その中には辛い想い出も忘れてしまいたい出来事もいっぱいあるだろう。
しかし、それ以上に幸せな事が多かったんだろうなぁと母の人生に想いを馳せる。

できなくなってしまったこと、覚えられないこと、忘れてしまうことも多く、自分自身に歯痒い気持ちもあるのかもしれないけど、それをも上回る想い出があり、その中で生きるのならそれも人生の終盤としては幸せなのかもしれない。

母には色々家事もやってもらい、協力してもらって、美味しいご飯を一緒に食べて、面白い映画やテレビドラマを一緒に観て、毎日一緒に笑って暮らしていけたらと思う。
認知症は良くなる事はないという事なので、これ以上進行しないよう、まわりの人たちに助けてもらいながら、長い長いコンツェルトを作りあげていきたい。
まだ序章も始まったばかりだ。

そしてこの日々は私の人生の終盤に、あの時母とあんな風に暮らしたなぁと想い出になるのだろう。




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